
楽譜の校訂術
―音楽における本文批判:その歴史・方法・実践
ジェイムズ・グリーア(著)
高久 桂(訳)
初版発行:2023年3月31日(発売:4月下旬)
体裁・総頁:A5判並製・368頁
ISBN:978-4-8105-3011-7 C3073
装幀:高木達樹
■内容
楽譜校訂の神話を解体する
古楽から現代音楽、オペラや交響曲まで-
実践の歴史をたどりつつ、校訂の諸原則を抽出。
方法論を発展させる理論的枠組みを提案する。
[付]楽譜校訂に関する用語集/日本語版のための最新資料リスト
■本文より
「このように際立った校訂実践の歴史を持ちながら,校訂の理論と方法論に関しては非常に限られた議論しかなされてこなかった。校訂に関心を持つほとんどの学者は,方法論的な正確性について頭を悩ませる代わりにただ校訂の作業に専心した。彼らは問題点についてその場その場で解決策を見出して可能な限り最良の校訂譜を生み出したのであり,方法に関する問題点については文献学者に委ねたのである。」(第1章)
■原書
James Grier: The critical editing of music: history, method, and practice (Cambridge University Press, 1996)
■目次
序
日本語版への序(校訂に関する最新の文献リスト)
凡例
1 序:校訂者の課題
2 音楽史料の性質
3 楽譜史料と系統的派生関係
4 誤記,異読,校訂上の判断:テクストを確定する
5 テクストの表現方法
6 結語:校訂者の姿勢
7 エピローグ
(1)ド・シャバンヌ(989-1034) の筆跡で筆写された楽曲の校訂譜
(2)モーツァルト《交響曲第36番ハ長調「リンツ」》 K. 425. クリフ・アイゼン編(London, 1992)
(3)ヴェルディ《ドン・カルロ》 ウルスラ・ギュンター編 (Milan, 1980)
補遺A―D(史料の所在,調査,記述,転写)
参考文献(手稿譜,校訂楽譜,論文と単行本)
用語集(訳者編)
人名・事項索引
■著者
ジェイムズ・グリーア(James Grier)
カナダのウェスタン大学音楽学部教授。主な研究分野は,特にアキテーヌを中心とする中世の典礼と音楽,本文批判。11・12 世紀アキテーヌのヴェルサリウムの伝承に関する研究で1985 年にトロント大学より博士号を取得。これまでに関連分野の論文,著作多数。2021 年には『西洋における楽譜の記譜法』を出版。カナダ中世学会のMargaret Wade Labarge 賞を2 度受賞し,2016 年にはカナダの王立協会フェローに選出された。
■訳者
高久 桂(Kei Takahisa)
1987年生まれ。立教大学法学部政治学科卒業。青山学院大学大学院文学研究科博士前期課程修了(西洋音楽史専攻)。同課程において音楽学を那須輝彦氏に師事,16~17世紀イングランドの音楽を中心に研究し,修士論文「J. ダウランド訳『オルニトパルクス ミクロログス』について」を提出。中世ルネサンス音楽史研究会同人。同研究会の出版物にグイド・ダレッツォ『ミクロログス(音楽理論):全訳と解説』(春秋社),訳書に『ルネサンス・初期バロックの歌唱法』(道和書院)がある。日本音楽学会,The Lute Society(UK),The Lute Society of America,日本リュート協会,The Renaissance Society of America 各会員。現在,桐朋学園大学附属図書館員。